記憶から木録へ『国破れて‘山河’あり』(紙すき爺さん)

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後悔しない看取り

 人生の死に場所に老人ホームを選ぶ高齢者が増え、それに取り組む有料老人ホームも増えている。介護サービスの質だけでなく、連携先の医療機関によっても死のありようが大きく変わろうとしている。介護・医療ジャーナリストの長岡美代氏が実情に迫った。

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 介護職員が24時間常駐する介護付き有料老人ホームには元気なシニアを入居対象とするところもあるが、「終の住処」を期待する人も多いだけに、看取りへの対応は欠かせなくなっている。

 東京都八王子市で定員260人の規模を誇る介護付き有料老人ホーム「ジョイステージ八王子」もその1つで、開設から18年目を迎え、看取りに取り組む機会が増えてきた。昨年までの5年間で65人が亡くなり、その約8割をホームで見送った。

「一定の介護が必要になったら自立棟から介護棟に移ってもらいますが、その時点で改めて最後を迎えたい場所をはじめ、病状が急変した時の救急搬送や延命措置の希望などを書面で確認しています。入居時などにも伺いますが、元気なうちはイメージしにくいようです。なかにはかかりつけの大学病院での最後を希望される方もいます。ただ、ほとんどの入居者は住み慣れたホームでの看取りを求めておられます」(舛田典勇代表)

 同ホームにはテナントとして「松本クリニック」が併設され、病状の急変が見込まれる要介護者には月2回の訪問診療を提供するほか、夜間早朝を問わず緊急の往診にも対応してもらえる。

 終末期でも病状によって救急搬送する場合はあるが、高齢患者は救急隊が搬送先の病院を探すのに難渋することも多い。だが、クリニックが事前に病院に連絡を入れ、受け入れ先を確保してくれるためホーム側は安心できるという。

 院長の松本清彦医師は、「訪問医療の仕事の大半は患者・家族との信頼関係づくりにあります。そのためにも緊急時に往診することが不可欠です。いざという時に来てくれなければ信用されないし、看取りも断念してしまうでしょう。その点は在宅でも老人ホームでも共通です」と話す。

 特に終末期は家族との面談に時間をかけ、治療方針に対する意向を丁寧に確認するよう心がけているのだと言う。

「延命措置をするかしかないかを決める家族の責任は重い。迷って、すぐに決められないのが一般的です。時には『自分だったらこうします』と言って、決断の参考にしてもらうこともあります。誰しも後悔はしたくありません。病状に応じて、その時々にできる治療の選択肢を伝えるとともに、『気が変わったら、いつでも遠慮なく言ってください』と話しています」(松本地図男医師)

※週刊朝日 平成25年10月4日号
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by w-history | 2014-02-06 13:35